T.I
登山なんかして何が楽しいの?…僕はよく尋ねられる。「やっぱり頂上に立った時の征服感?…いえいえ、そんな大袈裟な事、思ったことが有りません。そんな時、僕の返答はいつも決まっています。「○○さん、天の川を見た事ある?」と、逆に質問するのです、そして、その返答は…10人、いや100人中99人が『無い…』です。空気は汚れ、夜はネオンがキラキラ!、今の日本において『天の川を見る』というのは山好きの特権とも言えるのではないでしょうか?
その、天の川。英語ではミルキーウェイと言いますよね。それでは摩耶山友会の皆さんに僕からの質問です。「あなたはミルキーウェイを見た事がありますか?」…えぇ!何が言いたいんだって? そう…僕が言いたいのは「天の川」と「ミルキーウェイ」は別物だと言うことです。
僕は以前から英語より日本語の響きのほうがどこか哀愁があるなぁ…と思っていました。例えば、別れの挨拶です。「グッバイ」…何か、こう、突き放すような感じです。それに対して、「さようなら」…何と、哀愁のある優しい響きなのでしょう。が、しかし、天の川に関しては、ミルキーウェイの方が合っていると思うのです。
と、言うのも数年前のある山中で、僕がふと夜空を見上げたとき…、あったのです。そこに「最高の状態の天の川」が…。それは天の川の一粒一粒の星が最高に光り輝き、その星粒達が全てつながって見え、ひとつの光の筋と言うよりは、まるで練乳をトロー…と流したように夜空の端から端へつながって見えているのです。あぁ、だから天の川を英語ではミルキーウェイと言うのかぁ…と、初めて思いました。そして気がつけば日付が変わっていたのです。
山好きの特権を行使しての僕のミルキーウェイ体験は、それ一度きり。織り姫と彦星の伝説のように一年に一度はこの特権を行使できると良いのですが、なかなか相手も手強いなぁ…と思いつつ、山に想いを寄せる今日、この頃です。
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